[ ボクたちの願い:1 ] 白い壁に囲まれて。 「それが、ボクの最後のお願い。 守って……よね?」 「最後とか言うな! 一緒に、色んなとこに旅行行くんだろ!?」 「キミと居られただけで、十分だよ。」 恋人の手を強く握りしめ。 「……一人にしないでくれよ。」 「大丈夫。キミならボクが居なくても。」 ベッドで微笑む姿に涙が零れ落ち。 「泣かないで。ボクが困るよ……。」 溢れる涙を拭う指は弱々しくて。 「キミは、ボクの分も生きて……ね。」 力無く落ちる腕と、叫ぶ声。 † 人混みをかき分けて、 友人が居る溜まり場に到着し、 見知らぬ子に目がいく。 少し幼なそうな犬獣人の少年。 「ん、ボク?ボクは、ケイ。キミは?」 「……ライン。」 「そっか。よろしくね、ラインさん。」 ニコッと笑った姿に、俺は恋をした。 ケイとは、すぐに……ではないが、 何度か会ってから、仲良くなった。 次第に二人で旅行にも行くようになり、 旅先の旅館で。 「ケイ。」 「何?また温泉入る?」 「……す、好きだ。」 「ボクもラインさん好きだよ?」 「男同士で、愛してるって、嫌か?」 「……嫌、じゃないよ。」 「ケイは、俺の事……好きか?」 「……うん。ラインさんの事、愛してる。」 「ケイ、ありがとう……。」 俺の人生、初めての告白。 プロポーズ。ケイは優しく微笑んでくれた。 † しばらくして、ケイと一緒に住めるように、 仕事を変えた。ケイは困りながらも嬉しそうだった。 「ケイ、あのさ。俺と……。」 「うん。……いいよ。ラインとなら、シたい。」 ベッドで寄り添いながら、お互いにぎこちなく裸になり。 「ラインの裸、初めてみた……。」 「……恥ずかしいから、あまり見ないでくれ。」 そうは言っても、体は正直で、興奮してくる。 これから、ケイと。 「触って……いいか?」 「ダメって言う理由なんて、ボクにあると思う?」 そっと触れるケイの身体。 俺より細くて、小さくて。 冬毛のふさふさ感があって、柔らかい。 嬉しくなってキスをする。 「ライン。じらされたら、 ボクが我慢出来ないよ……。」 「ご、ごめん。」 慌てながら、ふと気付く。 男同士って、どうするんだ? 「ケイ。」 抱きしめて頬ずりする。 「……ライン。何すればいいか、 分かんないんでしょ?」 「…………うん。」 「だろうと思った。」 困った顔がバレバレだった。 ケイは俺に抱きしめられながら、笑ってた。 「じ、じゃあ改めて。」 「ボクからもよろしくお願いします。」 「知らなかったんだし、 そんなに笑わなくてもいいだろ?」 「んっ……。だって、ラインのあんなに困った顔、 ボク初めて見たんだもの。」 ゆっくり触れて、ケイがリラックス出来るように。 ケイが苦しくないように。 「い、いくぞ?」 「うん……ライン、大好き。」 「う、くっ……。」 「ラインがボクの中に……。」 密着してから抱き寄せる。 俺の為に、耐えてくれているのを 少しでも和らげようと。 「ライン……動いて、いい、よ。」 「分かっ、た……。」 二人の声が幸せを噛みしめるように、ゆっくりと。 「ケイっ!」 「あ、あぁ……ライン……。」 俺は強く抱きしめ、吠えた。 † 「何だよ、それ。」 「あ、ライン。これはね〜、ボクたちの結婚指輪。」 「……それを作ってると。」 見ると粘土を輪にして形を作っている。 「あとで熱すると、シルバーになるの。 磨けば立派なシルバーリングに。」 「こないだ隠れて買ってたのはこれか。」 「……バレた?」 笑いながらもケイは器用に2つの粘土を作る。 片方が犬だから、もう一つは、俺か。 「出来たっ。」 銀に輝く犬が走る指輪を渡される。 「これで、ボクたちは正式に夫婦だよ。」 「夫々じゃないのか?」 「ま、いいじゃん。」 「……そうだな。」 自分の左手の薬指に嵌めてから、 ケイを抱っこしてベッドに行く。 「じゃ、誓いのキスか?」 「それ以上でも。」 ケイを抱きしめた。