[ ネット繋がり:1 ] あと少し。 電車の中から、駅名を確認。 あと3駅。 初めて好きになった、 あの人に逢える。 出会いは、インターネットサイト。 とある、趣味の集まりのチャットルーム。 初めて話した時は、 普通に好感を持てる人の 一人だった。 そのうち、プライベートで 会わないかと誘われた。 ボクは、ためらって、 一度断った。 怖かったから。 今、パソコンごしに 話してる相手が、 自分のイメージと 違ってたらどうしよう、って。 しばらくして、 また、会わないかと誘われた。 ボクは、思ってたことを 素直に言ってみた。 すると彼は、 違ってたら言ってくれ、 帰るから、と。 そんな事言えるはずが無い。 だってその時には、 ボクは、彼が好きだったから。 結局、来て貰うのは忍びないから、 ボクが、彼のところに 行くことにした。地図的には、 北と南くらい、離れてたけど、 ボクには関係ない。 荷物には、二泊分の衣類。 休みは一週間。 移動だけで往復3日。 彼のところには、 居れて3〜4日。 それでもいい。 逢えればそれでいい。 ――あと1駅。 もう、彼のマンションが 見えるかもしれない。 場所も形も知らないけれど。 ちょっと緊張してくる。 考え無かったけれど、 彼のボクのイメージが、 違ってたらどうしよう。 何か言われちゃうのかな。 ……ヤダな。帰りたくなってきた。 ――駅に到着。 改札口で、切符を落として慌てたけど、 何とか駅から脱出。 彼は何処だろう。 駅で待ってるみたいだけ……。 「よう。」 「ひゃっ!」 いきなり肩を組まれたから、 飛び上がっちゃった。 「あ、あの…」 「あぁ。俺だよ、俺。◇◇。」 「……えっと、ボクが○○です。」 「おう。改札口で分かってた。」 見られてたのか。顔が赤くなる。 「でも、お陰で分かったよ。お前は俺のイメージのまんまだから。」 ちょっと嬉しかった。 「ボクは、もっと大人しい人かと……。」 「え、そうか。じゃあ退散するか?」 「こ、困りますっ。」 「冗談だよ。ま、とりあえず飯食いに行こう。」 「はい……。」 ボクは、緊張したまま後をついていく。 これからの数日を夢見ながら。 ……正直言うと、彼がイメージより 何倍も格好良かったんだけどね。 「おーい、置いてくぞ?」 「今行きますっ。」 ボクは彼を追いかけた。