[ 花粉症:1 ] 花粉の季節。 「う〜…花なんて全部枯れてしまえ。」 ぐずぐずと鼻声で涙目になった、 俺こと、茶色の毛並みの虎獣人。 「……いくら念じても、花粉症は治らないよ、尚輝(なおき)。」 呆れ顔で俺を見つめてる、白い毛並みの雄の兎獣人。 「だってよ〜、鼻が効かないのは凄い不便だぞ。それに目も春海(はるか)みたいになるし。」 「……そんなに僕みたいになるのが不満?」 不機嫌に眼鏡をかけ直して、兎獣人が抗議する。 「そうじゃねえけど……、くしゃみとか鼻水で一日中ダルいんだよ。」 「じゃあ医者に診てもらえば?」 「やだ。」 即答する俺。 「医者行くと、森に住む虎獣人として恥ずかしくないか、と説教されるし。」 「そりゃそうだよ。仕方ないし。尚輝の両親は医者兼森林警護隊の隊長なんだから。」 溜め息をついて机に突っ伏す俺。 「春海、昼になったらおこ」 「の前に寝ないの。」 丸めた教科書で叩かれた。 「いいじゃん、ケチ〜。」 「はいはい、何でもいいから寝ないの。」 「何だよ〜。んな事言ってると、今日帰ったら春海を……むぐむぐ。」 「それ以上言わない。」 鼻先をしっかり春海に握られてるから最後まで言えなかった。 「ぷは。鼻先握んな!」 「尚輝が……悪いんじゃないか。」 「あれ、春海顔が真っ赤だぞぉ?」 「うるさいっ!」