「……ごめん。出てって。」 それだけ言い、ドアを閉める。 「どうしたんだよ。」 ドア越しに聞こえるのは、 相方の熊獣人の声。 俺はドアに背中を押し付けて座り込む。 「……疲れたんだよ、もう。」 「俺のせい……か?」 体に似合わぬ心細い声がする。 「そう、だよな。ごめんな……。」 ドアを叩く音が無くなる。 (これで、いいんだ。) 自分で自分に言い聞かせる。外は土砂降りの雨。 アイツはこのままだと風邪を引くだろうか。 (自分で決めたのに、何でこんなにまだ……っ!) 一人になった広い部屋で、俺は声を押し殺して泣く。 「やだ……よ。俺だって一緒に、居たかったよ。でも、もう……。」 呟きが部屋に響く。 † 「ロウ♪今日は仕事いつ終わるんだ?」 俺はロウ。青い毛並みの狼獣人。普段は会社員している。 「多分定時だろ。17:00くらいかな。」 「明日は休みだよなっ?」 キラキラした目で、 ガタイのいい熊獣人に 見つめられる俺。 こいつは、俺の相方。♂同士の恋人だな。 茶色の短い毛並みの熊獣人。名前は、カーゴ。 「……あぁ。言いたい事は分かったから、 小さい尻尾を、有らん限り振らないでくれ。」 「ロウだって、ウケる時は尻尾振ってるぞぉ?」 「行ってくる。」 「おぃ!オレが悪かったから、機嫌直してくれよ〜。」 情けなくすがりつく、体格のいい身体。 俺は、中肉中背くらいだから、たまにつぶれそうになるが……。 「ホント、お前ギャップありすぎだよな。」 「何だよっ。いいじゃねぇか。」 「とりあえず。俺の腕に、頬擦りするのを止めろ。」 「え〜。」 「え〜。じゃないから。じゃ、行ってくる。」 俺はドアを開けて、革靴を履く。 「お〜う。オレはまたバイトでも探してるよ。」 「何かあったらメールよろしく。」 「りょ〜かい。」 俺はドアを閉めて会社へ向かった。 † 「うーん……。」 [銀行口座残高:0] 俺は銀行のATMの前で、悩んでいた。 「やっぱ、カーゴの収入が無いのは痛いな……。」 最近、カーゴはバイトがないらしい。その為か、 俺の生活費も圧迫されてて、カーゴには悪いが正直辛い。 「すぐに見つかればいいんだけどなぁ。 そしたら、また二人で旅行なり行けるのに。」 最近は近場にしか行ってない。理由は分かるように収入が少ないから。 もう、旅行なんて3年は行ってないんじゃないか? 「まぁ、言っててもしょうがないよな。帰ろ。」 溜め息をつき、俺はカードをATMから取り、会社から帰宅し始める。