[ 草の匂い:2 (♂ x ♂) ] 呼び出し音の後、寝ぼけた声でアイツが答える。 「ぅう?シン、おはよ〜。」 「ガク。また、寝てたのか。」 「うぇっ!?な、何のことかな……。」 「後でシメる。」 「ご、ごめんなさい……。」 「って、この話じゃなかった。 ガク、俺これから北海洞行くから。留守番よろしく。」 「あ〜、うん。……ん?北海洞?」 「うん。北海洞。」 「北海洞って何処だっけ?」 「北の海に浮かぶアレだ。」 「あぁ。って、今日帰って来ないじゃん!」 「そうなるな。」 「……なら、連れてってくれるとかは?」 「却下。今起きたような人はダメです。」 「うぅ……寂しくて自殺してもいいのっ!?」 「そう言える人は自殺しないよね。」 「そうだね。」 しばし沈黙。 「……やだぁぁぁっ!!」 「ヤダとか言うなっ!!」 「シンの意地悪……。」 ガクの声がちょっと涙声になってきた。 「まぁ、何か買ってきてやるから。」 「……ほんとに?」 「あぁ。」 「じゃあ、冬野恋愛ドリンク。」 「まぁた甘いのを。」 「いいじゃん、好きなんだし。」 「はいよ。じゃあな。」 電話が終わる頃には鳴多(なりた)空港へ着き、 マネージャーは搭乗手続きに向かう。 俺はそれまで買い物。 空港の土産物屋で、ガクが好きそうな甘い物を 宅急便で送る手配をしておく。 「シン、終わったぞ。」 「あ、分かった。」 俺はマネージャーに促されるまま、 搭乗ゲートへ向かう。ファンへのサービスも忘れずに。 「シンさん、こっち向いてください!」 「あぁ、はい。」 フラッシュを背に浴び飛行機に搭乗すると、 中ではフライトアテンダントさんの説明が始まる。 「AAA(トリプルエー)航空をご利用いただき、 ありがとうございます。本機は鳴田-佐津幌(さつほろ)便です。 佐津幌には、10:30頃到着予定です。 どなた様も、ごゆるりとフライトをお楽しみくださいませ。」