[ 朱い衝動:2 ] ――あった。 オイラと同じシルシのあるほこら。 薄暗い中を進むと、 光に照らされた羽根飾りを見つける。 これ……なのかな? 見回すが、他には何もない。 試しに口でくわえて頭に付ける。 何も変わらず。 「居たぞ!」 鎧を付けた人達が入り口を塞ぐ。 オイラは暗闇に身を潜めてから、 流れてきた匂いを嗅いで分かった。 この人達、あの時の。 でも、もうオイラは大丈夫だよ。 もうアレはならないから。 ほら、これ見つけたんだ。 だからもう、大丈夫だよ。 明るい場所にオイラは姿を出し、頭を向ける。 「……観念したんですかね?」 「さぁな、どちらにせよ、殺せとの命令だ。」 ごめんね、ごめんね。 もう大丈夫……っ!? 銃声に、急いで身をかわしたけど、肩を撃たれた。 何で撃つの? オイラはもう大丈夫だよ? 痛いよ。 止めてよ。 包囲をかいくぐり、 ほこらから逃げる。 オイラが近くの村に隠れると、 すぐに彼らが村を包囲する。 ……何で? オイラ謝ってるよ? 悪い事したら、もうダメなの? 「居たぞ!」 じりじりと逃げ道が無くなっていく。 しだいにオイラは、 村の中心の広場へ。 「もう逃げられないぞ!」 違う。オイラは逃げたいんじゃない。 また、ミンナと一緒に居たいだけなのに。 団長の号令と共に、 何度も銃声が響く。 ――どうして、オイラだけ。 失いかける意識と共に、 また、アレが現れ始める。 <オマエは、彼らには理解サレナイ> オイラは、理解されない? <元々、無理ダッタンダ> 無理なの? <ソウダ。ダカラ"オレ"ガイル> ……違うよ。オイラはオイラだから。 <チガワナイ。オマエは、オレダ。> 身体がまた、朱く染まっていく。 羽根飾りは黒く、朱く染まっていく。 <サァ。ツギハ、オレノバン、ダ> 騎士団を圧倒し、 次々に動かぬように 成り果てていく。 その様子を、オイラは"中"で うずくまったまま見つめる。 もう、オイラには止められないから。 <肉、ヒキサク> こんなのオイラじゃない。 <コロス、タノシイ> オイラは……違う。 不意に、草と子供の匂いがする。 <柔ラカイ肉、子供> 走り出してすぐ、 子供を見つけ、 そのまま飛びかかろうと。 ――子供の怯える目が、あの時のように。 <ニイチャンノ、ニオイ> ……いやだぁぁぁっ!! オイラはとっさに身を翻し、子供の前に滑り込む。 それと同時に、身体が穿たれていく。 兄ちゃん。兄ちゃん。 オイラ、我慢したよ。えらい? 震える手を子供へ伸ばす。 羽根飾りは再度白くなり、朱が引いていく。 ……あれ、おかしいな。 兄ちゃんどこ? 暗いよ、怖いよ。 みんなはどこ? おかしいな、オイラどこに居たんだっけ? 兄ちゃんも、見えないよ。 「……ごめんな。こうするしか、なかったんだ。」 誰に言うでもなく、 団長は冷たくなった骸を 優しく撫でて呟く。 そして、子供の写真がはまったロケットを 自らの首から、その骸の首へ掛けた後、 丁重に埋葬するのだった。 = 完 =