[ ボクたちの願い:3 ] ケイは静かに寝ていた。 俺は、その傍らで寝顔を見つめている。 「……ねぇ、ライン。」 「なんだ?」 「最後のお願い。」 「何でも言え、叶えてやるから。」 「うん。じゃあ、ね……。」 寝たまま、俺の方に顔だけを向けて。 「ボクのこと、忘れてください。」 「……。」 「最初から居なかったかのように、忘れてください。 そして、新しい恋人を作ってください。」 俺は泣きながら首を振る。 「そんなの、無理だっ……。」 「無理じゃないよ。ラインなら大丈夫だから。」 ケイは俺の手に、自分の手を添えて。 「それが、ボクの最後のお願い。守って……よね?」 † あれから2年か。 俺はまだ、ケイが好きだ。 だけど、それじゃダメなんだよな、ケイ。 「……お願い、されたんだもんな。」 拳をギュッと握って。 「願いは、叶えないと、だよな。」 俺は寒空の中、一人歩き出した。 = 完 =