[ 草の匂い:4 (♂ x ♂) ] 「AAA航空をご利用いただき、ありがとうございます。 本機はまもなく佐津幌に到着します。 どなた様も忘れ物なきよう、降機準備をお願い致します。」 空港から出ると、一面雪景色だった。 「……寒い。」 「会場は暖かいから大丈夫だろ。室内だしな。」 マネージャーに連れられるまま、会場近くのホテルに向かう。 「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。 シン様のマネージャーさんですね? 405号室をどうぞ。」 「おー。高そうなホテル。」 「シン、いいから行くぞ。」 「へいへい。」 荷物を置いてから、今日のスケジュールを聞く。 「今回のメインは、佐津幌ドーム。 他には、ラジオとテレビ局の収録だな。 帰りは明日の朝方だ。」 「マネージャー。」 「ん?」 「ごめん。本当なら、もっと仕事あるんでしょ? だけど、俺とガクの事知ってるから、 明日に帰れるようにって。」 「気にすんな。ガクだって、昔に比べたら 随分とマトモになってるしな。 お前ら見てると、少しだけ応援したくなってな。」 「……ありがとう。」 「ほら、シン。しんみりしてないで行くぞ。 ファンも待ってんだからな。」 「うん。」 ホテルから車に乗り、佐津幌ドームへ向かう。 舞台裏に居ると、マイクアナウンスが聞こえる。 「……お待たせしました。今日の主役、シンさんです!」 曲が掛かると同時に俺は舞台へ。 「みなさん、楽しんでいってくださいね。」 歓声と共に俺は歌い出す。 『ささやかな時間 ありふれた時間 ボクと君がいる時間 君が居てくれたから 今のボクがある ボクは君の為に 君はボクの為に 出来ることは何がある? 何もいらない 何も欲しくない ボクは君が居ればいい 君の暖かさに、ずっと包まれていたい 君が居れば――』 大歓声の後、イベントは終了した。 「シン、お疲れさん。」 「ん。じゃあ連絡しよっかな。」 「全く……関係者にバレないようにしろよ?」 「バレないって。……あー、もしもし。ガク?」 「んぁー。シン?」 「俺以外掛けないだろ。 とりあえず明日の朝方に、こっち出発するから、 そっち着くの多分昼過ぎだわ。」 「えー。もっと早くしようよー。」 「ラジオとテレビ局の仕事が残ってるから、無理。」 「マネージャーさんに言えば?」 「無茶言うなっ!」 「まぁ、いちおう了解〜。 お土産はカニと、冬野恋愛ドリンクで。」 「……増えてないか?」 「細かい事は気にしない。」 「じゃ、明日な。」 電話を切って、ラジオ局に行く準備をする。 「今日の収録はこれで終わりだ。」 「ふぅ。じゃ、さっさと帰りますか。」 「……にしても。いつまでも、 こうはやってられないからな。 何か考えておかないとなぁ。」 「んー、ガクにも歌わせる?」 「どうなんだろうな。ガクは。」 「こないだアカペラを聞いた限りじゃ、 悪くないと思うけど。」 「なら、それも考えてみるか。」 こうして俺は一日を終えた。