「カーゴ、交通費のお釣りは?」 「……あー。昼飯食べちゃった♪」 「そうか、まぁいいや。」 こんな事が毎回だと、俺だって、ちょっとは疑ってくる。 だから、カーゴの財布の中身を見た事もあるが、 貯めてるんじゃなく、使ってる感じの残り具合だった。 「……カーゴ。」 「何?」 「面接、行ってるんだよな?」 「疑ってんのか?」 「そうじゃない。あまりにも受からないから。」 「……受からないんだから、仕方ないだろ。」 「そう、だよな。ごめんな。」 聞くんじゃなかった。その後、カーゴも俺も寝るまで、 静かで、どこかぎこちないまま眠りについた。 † 「カーゴ。今週末、出掛けてくる。」 「一緒に行っちゃダメなのか?」 「一人で、行きたいんだ。」 「飯はどうするんだ?」 「お金は置いてくから。」 「……ロウ、まさか元彼のアイツに会うんじゃないよな?」 「まさか。ちょっと泊まりがけで行ってくるだけだよ。」 「……泊まりがけ?」 「あぁ。」 「そう、か……。」 普段常に一緒だから、連れて行かないのが、 カーゴは寂しいようだ。当たり前か。 カーゴの頭をワシワシと撫でておく。 † 「じゃ、行ってくる。」 「……あぁ。」 「ちょっと、2日間留守にするだけだから。」 俺は笑って、カーゴの頭を何時もみたいに撫でる。 カーゴは複雑な顔をしながら、俺を見送っていた。 電車と新幹線を乗り継いで。少し雪の降る山奥の旅館に着く。 「あのー、すいません。今日明日泊まる予約入れた、ロウですが。」 「ロウ様ですね、こちらへどうぞ。」 美人な仲居さんに連れられ、部屋に荷物を置く。 「何かありましたら、遠慮なく、どうぞ。」 「あ、はい。」 仲居さんが部屋から出ていった後、俺は部屋に大の字で寝そべった。 (カーゴ、何してるかな……。) 自分で考えてから、頭を振る。 こんなんじゃ来た意味、ないかもな……。 俺は浴衣を持って露天風呂へ向かった。 (……貸切みたいに誰も居ないな。時間が早いからかな。) 服を脱いで軽く湯を浴びてから、ゆっくり浸かる。 (来たのはいいけど、どうしよう、これから……。) 考える事は山ほどある。考えたくないが、そのためにここまで来た。 俺は、カーゴは、この2日間で、何か変わるんだろうか。