[ カルとナギ ] 大きく伸びをする。 パジャマからラフな格好に着替えて、家を出る。 近くの公園には、まだ人影もない。 空気も少し冷たい中、ジョギング開始。 適当に曲を聴きつつジョギングを終えて、 ぴーぴー五月蝿い相方と一緒に朝ご飯。 「ナギ、今日は帰るの遅い?」 「ん〜、仕事区切りついてるから、定時かな。」 「そっか。」 「じゃ、行ってくるね。」 「ん〜。カル、行ってらっしゃーい。」 それだけ言葉を交わして家を出た。 俺は、ナルフ=ギヨン。 全身黒で額から鼻に掛けて、 白い縦長の菱形模様が入った狼獣人。 さっきのあいつは、カマニアス=ルーベント。 赤い毛に、下顎から内股まで、 内側だけ白い毛色の狼獣人。 相方…というか、恋人。男同士だけどな。 『今日は残業しないでね!! by カル』 携帯電話にメールが入る。 今日はカルと出会ってから、ちょうど一年。 あいつは記念日とか、イベントとかが好きで、 いろいろ考えてるみたいだが、 毎度俺が忘れてるから、怒らせてばかり。 「今日は覚えてたから、大丈夫だな。」 タバコに火をつける。 「…また煮詰まってるんですか?」 隣から、同僚の白い女猫獣人に言われる。 「いや。たまには、 ちゃんと"記念日"を祝おうかな、ってさ。」 「…カマニアス君ね。彼、いい子なんだけど、 何で貴方みたいのが好みなのかしら。」 「本人に向かって、それは無いんじゃないか?」 肩を落として呟く。 「まぁ、二人の邪魔をしないし、 むしろ公認してるんだから、いいじゃない。」 微笑み、俺の肩を軽く叩いてから、 彼女は"編集長"の席に座る。 ここは、国立図書館。 各地の情報や、近況を分析して本にしたり、 俺みたいな作家の本の出版も行われてるところ。 普通の作家は、自宅で執筆したのを持ち込む。 だが俺は、カル曰わく『家で作業してたら、 本が仕上がらないし、俺の体ももたないから、 編集長にしごかれて来なさい!』だそうで。 家だとやる気ないし、カル居るのに何もしないとか、 俺には有り得ないんだけどなぁ。 = 続く? =