[ 他が為の ] 白。 雪の中に居る。 赤。 倒れたヒトの血。 茶は自分。 獅子の茶に赤が混ざる。 自分は、 その中で舞い踊り、 テキを切り刻む。 何度も。 何度も。 テキが動かなくなるまで。 自分は、何だろう。 テキを倒し終わったら、 ご褒美貰えるかな。 ご褒美って、何だっけ。 誰から貰うんだっけ。 静かになったら、 思い出せるかな。 きっと、そうだ。 吼える獅子に 群がる無数の人々。 獅子は舞い、 屍を築いていく。 誰かの為に手に入れたはずなのに。 護る為に使われるべき力なのに。 獅子はもうそれすら分からず、 ただ屍が増えていく。 遠くの角笛の音色に、 はっとする獅子。 だが、願いは虚しく、 獅子は再び血を啜る。 本能のままに。 理性など、なかったかのように。 そして、獅子は再び 踊り狂い始めた。 = 完 =