あれからしばらくして。 校長は入院してた。何か発見された時は重傷だったらしいし。 クラスで見舞いに行ったら、すごい喜んでた。……僕には投げキッスしてきたけど。 うぅ、思い出したらまた鳥肌が……。 そう言えば今日、戸羽先生から、クラス合同のお花見をするって紙貰ったんだった。 何でも協調性を高める為だとか。特別クラスの人間の子も来るらしいから、楽しみ♪ まだ僕は会った事無いんだよね。うちのクラスとは別の時間割りみたい。 どんな人達なんだろ…。あ、でも。校長も来るみたいだから、気をつけないと…。 今度は米兄居ないし…。 系羅は戸羽先生も俺も、都馬堵だって居るから大丈夫だって言うけど…。 それから。お花見当日に。 クラス毎のバスだから、皆でトランプしたりしてたら、すぐに着いちゃった。 「さ、皆さん降りてくださいね。場所は立て札があるので、 そこに一旦集まっててください。始まったら移動していいですよ♪」 「は〜い。」 皆おとなしく言われた通りにしてる。僕も特別クラスが気になるけど…我慢我慢。 「…よし。全クラス確認終わったので、お花見していいですよ。 時間までには戻るように。」 そう言って、戸羽先生も職員が集まってるとこに戻ってった。 「……さ〜て。系羅、都馬堵。特別クラスの子、見に行こ♪」 「あ、来てるんだったよね。系羅、行こう♪」 「…う〜…しょうがない…行こうか。」 何か系羅は人間の子に嫌な思い出があるみたいで、しぶしぶついて来てた。 都馬堵も僕も見たこと無いから、わくわくしてるのに。 そのままてくてくと歩いてくと、「特別クラス」って看板を発見。 「あ、ここかな?」 「そうみたいね。」 ぐるっと見回すと…あ、居た。 あれ?人間の子は顔とかには体毛無いんだ。ふぅん。 「ねぇねぇ、キミの名前は?」 近くで体育座りしてた子に声掛けてみた。 「…ウチは…ゆ〜き。」 「へぇ…格好いい名前♪僕は界杜。よろしくね♪」 ちょっと話せたから嬉しくて抱き付いたら、物凄く慌ててた。 都馬堵が、界杜流の挨拶なのよって説明してたから、何かいけなかったのかな? まぁ、喜んでくれたみたいだから、いいや。 そして、ゆ〜き君を連れて、4人で花見会場を散歩。 桜や梅の花が綺麗だなぁ…って見てたら、 3人に遅れそうになっちゃったから、慌てて追いかけたけど。 ゆ〜き君達、人間には「花粉症?」ってアレルギーがある人も居るから、 バスの中で花見してる子も居るんだってさ。大変だなぁ…。 「ねぇねぇ、ゆ〜き君。好きな子居るの??」 「んぅ…今は居ない。」 「そうなんだ♪がんば♪」 頭撫で撫でしたら、何か悶絶してる……面白い子だなぁ♪ 都馬堵が手を繋ごうとすると離れるのに、僕だと握ってくるのも面白いけど。 あ、系羅は都馬堵の隣。系羅、都馬堵、ゆ〜き君、僕、って並び方。 一通りぐるっと回り終わったから、戸羽先生達のとこも覗きに行ってみたら…。 あれ、校長先生が見当たらない。戸羽先生は居るけど…何か酔ってる?? 「…あ、ゆ〜き君。探しましたよ?ヒック。ちょっとこっちへ…。」 「ふぇ?」 ゆ〜き君が戸羽先生に手招きされたから、僕らも一緒に輪に入る。 「……早めに好きな子出来ないと…学校だと大変ですよ?」 「んぅ…。」 「戸羽センセ、ゆ〜き君、困ってるよ?」 「界杜君は、都馬堵さんと系羅君が居るからいいの。問題はゆ〜き君…」 何かじ〜っと見てる戸羽センセの目が据わってる…。止めた方がいいのかな…。 「…って、センセ。僕は二人とは幼馴染みなだけだよっ!?」 「気にしない、気にしない。現に系羅君も都馬堵さんも、 まんざらじゃなさそうですよ?」 「……えぇっ!?」 見ると、二人とも照れ笑いしてる。……え、僕だけ蚊帳の外?? 「…さ、ゆ〜き君。センセが指導してあげよう…。」 「ふぇぇ……。……!!」 ゆ〜き君が逃げようとしたら、優しく抱き寄せられて、 いきなりキスされて……戸羽センセ、ゆ〜き君が好きなの!? 「センセ、ダメだよっ!」 「界杜君…邪魔しちゃいけませんよ?」 「ゆ〜き君嫌がってるし!」 「…そうですか?」 ……あれ?何かゆ〜き君が戸羽センセに抱き付いてるし…。何で?? 「戸羽センセ……。」 「何かね?ゆ〜き君。」 「……好きです。」 ……は?今何て言ってた??僕は何も分からないまま、ただオロオロするだけ。 「さ、ゆ〜き君。あちらへ……。」 「はい……♪」 ……僕がぼーっとしてる間に、戸羽センセとゆ〜き君は何処かへ行っちゃった。 え〜と……。 「あっ、追い掛けてゆ〜き君取り返さないとっ!」 「あの様子なら、大丈夫じゃない?」 「どこが!?」 そのあと系羅と都馬堵に止められ、結局追い掛けられなかった。 まぁ、その直後にあの校長が来たってのもあるけど……。 「やぁ、諸君!元気してるかな?」 「えぇ…元気ですけど…。」 「特に界杜君!」 「……。」 怪我したの懲りて無いし。後から聞いた話だと、米兄にボコボコにされて、 入院してたみたいなのに、全然反省してない感じ。 …で。僕はと言うと。また校長が迫って来てるんだけど…今日は米兄居ないし、 何か校長酔ってるし……。 「さぁ、今日こそは界杜君を頂きますよ?」 「うぅ……。」 「させる訳無いだろ?」 系羅が庇ってくれた♪頼りになるなぁ…。僕は系羅の後ろに隠れながら様子を見る。 「界杜君……いつまでも童貞じゃ、♀が寄り付かないですよ?」 「童貞って何?」 「……は?」 皆がぽかーんとしてる。何か僕、変な事言った?? 「……そうですか。なら尚更教えてあげなくてはね…。」 「ふぇぇ……?」 そうしてる間にじりじりと追い詰められて、大きな桜の樹に背中がぶつかった。 「系羅、都馬堵、どうしよ……。」 「う〜ん……。」 二人とも、良い案がなさそう。どうしよう……。 二人に守られてるけど……僕って格好悪い状態? 「……さぁ、鬼ごっこは終わりですよ…。界杜君を渡しなさい♪」 「断るっ!」 「…しょうがないですね……。では系羅君から頂きましょうか♪」 「は!?」 あっ、系羅が掴まって、押し倒されてる。…って見てちゃだめじゃん! 何かないかな……あ。 「……えいっ!」 ゴツッと鈍い音が鳴って、校長が脇に倒れた。えっと……一升瓶割れなかったけど。 ……大丈夫だよね?多分。校長も……。やりすぎちゃったかなぁ……。 「系羅、大丈夫?」 「あぁ…界杜ありがと。」 手を繋いで起こす。校長は伸びちゃったから、もう安心かな? あ。ゆ〜き君、どうなったんだろ。服を整えてる系羅と都馬堵を連れて捜す。 「なかなか居ないなぁ……。」 「あ、居た。あそこ。」 芝生の上で裸になってる、ゆ〜き君と戸羽センセを発見。 「戸羽センセ、生徒襲っちゃダメだよぅ〜。」 「襲う?生徒との合意があれば襲って無いですよね?」 「……そういう事じゃなくて〜。」 三人で戸羽センセを抑えるけど……こんなに力強かったっけ? 全く関係ないみたいに、ゆ〜き君をじりじりと追い詰めてる。 「……センセってば!」 あう〜。全く聞いて無い……。かと言って、戸羽センセを一升瓶で殴る訳にも……。 「さぁ、ゆ〜き君。めくるめく愛の成就を!!」 「それくらいにしときなさい。」 あ、校長が戸羽センセに水掛けたら、元に戻ったみたい。 「襲うのは許可してませんよ?」 「……はっ、すいませんでした……。」 元の戸羽センセに戻ったのは良いけど……何の事だろう? そのあと、ゆ〜き君は特別クラスに戻って……もちろん服着てだけど。 僕らも、「普通のお花見」をして、お花見は終わり。結局、ゆ〜き君には会えたけど、 あんまり話出来なかったなぁ。また会えると良いんだけど。いろいろ聞きたいし♪ 系羅が言うには、ゆ〜き君が襲われたかどうか、分かんないんだって。 あのあと、ゆ〜き君はたまに、「戸羽センセ……♪」って呟くらしいんだけど、 僕が聞いた訳じゃないから分かんないや。 そうそう。校長は今度はムチウチ?になってるって聞いたよ〜。 ……強く叩き過ぎたかな。後で謝っておこっと。 あぅ……眠くなってきたから、これくらいにしよっかな…。おやすみ♪