[ ちょっと大人な牛タン学園:2 ] しばらくして、さっきの豹獣人さんが何かを持ってきた。 「都馬堵、これ……。」 「そう、婚約指輪。形だけだけどね。」 そう言って、シルバーリングを僕の中指にはめる。僕らの世界での"婚約"は、結婚したのと一緒。だけど、一夫一妻じゃあない。人によっては一夫四妻(♂1♀3)とか、一夫六妻(♂5♀1)なんて人も居るみたい。僕はまだ分かんないし、実感無いけど。中指に指輪するのは犬獣人同士の"契りの証"なんだ。虎獣人だと耳にピアス。夫は左、妻は右みたい。 「都馬堵、ありがと……。」 ちょっと照れくさい僕に、都馬堵は笑って額にキスしてから撫でてくれた。 「……結婚式とかは考えなくていいから。界杜がゆっくり考えて、答え、出してくれればいいから。私は界杜とこうやって一緒に居たいだけなんだしね。」 「うん……。」 まだ僕は都馬堵にどうしたいのか、伝えてない。というか実感沸かないし、都馬堵も、今は居ないけど系羅とも、ずっと一緒に居られると思ってたから。恋とか、愛とか、全く僕には遠い話だと思ってたから。二人の事も、米羅兄ぃも、みんなも好きだから。誰かを選ぶなんて考えたこと無かった。 「さ、て。系羅が拗ねてるだろうし。界杜、帰ろ。」 「う、うん。」 二人で帰りながら、僕は何かずっとモヤモヤしっぱなしだった。話聞いてないって都馬堵に怒られちゃったし。 「界杜、系羅って好きな人居るのかな。」 「えっ?どうなんだろ。系羅とそういう話をしたことないや。」 「……ふーん。」 † 「じゃ、また明日。大学でね。」 「うん。またね、都馬堵。指輪……ありがと。」 きっと都馬堵の事だから、この指輪もバイトして買ったんだろうなぁ……。親に頼りたくない、って。そんな事を考えながら帰った。 「界杜、おかえり。」 「うん、ただいま。系羅、お土産は肉まん。」 「サンキュ。米兄ぃが夕飯出来たら教えてくれるってさ。ゲームする?」 「あ、うん。……あれ?系羅、右耳にピアス穴開けたの?」 「あー、うん。ファッションで。」 「ふーん。」 二人でゲームしてたら、すぐに米羅兄ぃに呼ばれて夕飯に。今日はカレーみたい。 「米羅兄ぃ、忙しいなら、また3人で家事交代するよ?」 「ん、大丈夫だから。残業してたら頼むよ。」 「分かった〜。あれ、米羅兄ぃ、左耳にピアスなんてしてたっけ?」 「……このピアスが気に入って、空けたんだ。変か?」 「ううん、似合ってるけど。社会人だから、アクセサリーなんてしないって言ってなかった?」 「き、気が変わったんだよ。」 何で米羅兄ぃに質問したのに、系羅まで真っ赤なんだろ? 「あ、もしかして米羅兄ぃと系羅、契りの証作ったの!? ……って、そんな訳ないか。兄弟だし、長く一緒に住んでるもんね。」 「そ、そうだよ。界杜の気のせいだから。」 「何か系羅、焦ってない? まぁいいや、ごちそうさま。」 食器を片づけて、部屋に戻る。お風呂の準備でもしてようかな。 † 「系羅、先に入るね。」 「うん。一緒に入って弄ってやるか?」 「……今日は、いいっ!」 ちょっと怒りつつ風呂場に。系羅と一緒に入ると疲れちゃうし、最近はたまにしか一緒に入ってない。系羅が勝手に入ってくる事はある。米羅兄ぃは気遣ってくれるから、酔ってる時以外に鉢合わせになった事ないなぁ。そういう時の米羅兄ぃはちょっとエロいから気をつけてるけど。