「ザイよ。」 「はい。」 寝室で手招きをする王。俺はそれに従い、 王の脇に寄り添う形でベットへと潜る。 「……すまんな。」 「いえ。王の為とあらば。」 俺がそう言うと、背から抱き締められ、 王の温もりが背中越しに伝わってくる。 「ザイ、ごめんな。」 「いいんだろ、これで。」 「……ありがとう。」 王はそう呟くと、俺を抱き締めたまま、眠り始めた。 俺はしばらくそうした後、ゆっくりと腕から抜け、 月明りに照らされた部屋を歩く。 俺は何も考えず、テラスの椅子に座り、月を眺めた。 「シグナス、イリス。俺はこれで良かったんだろうか……。」 シグナス。王の兄上の名。 イリス。俺の妻の名。 寝ている王の名は……。 少し肌寒くなり、またベットに戻る。 王は寝ぼけながら、俺を抱き枕にしていた。