「ゼラ。」 「何ですか、ザイさ……!!」 飛び退いて離れるゼラに、 俺は追い討ちをかけるよう、 ナイフを投げるが、かわされた。 「このことだったんですね。 ……任せてください。 オレ、絶対に何とかしますから。」 ゼラは片刃の剣を構え、対峙する。 俺はショートソードに持ち替えた。 「ザイさんは、オレの心を救ってくれた。 だから、オレもあなたを助ける!」 ゼラと刃を交える俺。俺の意識が残ったまま、 意志に反して動く体。自分ではどうしようもなく、 自分で自分を殺してしまいたかった。 次第に息の上がってきたゼラへ、 俺の刃が肩をかすめる。 「……やっぱり、強いですね。 オレの師匠だから、当たり前ですが。 でも、オレ。必ず助けます!」 ゼラの一撃を狙った構え。 あれは俺が教えた"一撃一閃"の突き。 外したら、ゼラは……。 「大丈夫です。オレは外しません。 だから、信じてください。」 俺の胸に目掛けて勢いよく突こうとした瞬間。 俺は自分が避けて、ゼラを斬るイメージが見える。 そして、ゼラとの日々が思い出される。 初めて会ったのはギルドでの仕事。 その時は口だけの実力だった奴で、 気晴らしに色々教えていた。 初めて本当に笑ってくれた時。 俺はガラにも無く、嬉しくて酒を飲み過ぎて、 店とゼラに迷惑を掛けたり。次の朝、ゼラに告白された。 烙印の事を説明した時、ゼラは笑ってこう言ってくれた。 「大丈夫ですよ。オレは、いつでもザイさんの物ですから。 だから、ザイさんにたとえ殺されても、 オレは後悔しません。それだけ、ザイさんに惚れてるんです。 ……自分でも、恥ずかしいですが。」 思い出は、どんどん溢れてくる。 俺の想いも、態度も、心もゼラの思い出と一緒に。 ――俺は。 『いやだ!ゼラを、俺は殺させやしない!』 強く願った事によるかは分からないが、 身体の自由を取り戻す。だが、ゼラの刃は止まらない。 俺は、ゼラに微笑んで、一撃をそのまま受け、貫かれた。