< 二、遭遇したものは >======================================================== (ドラゴンか……。尚更夢な気がしてきたな……) そんな事を考えつつ、立ちつくす。巳紅はまだ駅の中だ。伝承には、 凶暴やら何やらと、色々載ってはいたが……結局は想像の産物。そう思っていた。 だが、この目の前に居るのは何なんだ……。 黒いバカでかい体躯でコウモリのような翼。目は赤く輝き、こちらを見据えている。 手や牙、爪は鋭く、一振りで色々なものが壊れそうだ。……勿論、俺さえも。 <…マダ、ダイジョウブ…> そんな声がまたして、何処からなのか周りを見渡すが、定かでは無かった。 (…さて、どうするか。言葉通じるのかね…) ようやく、巳紅が飽きてこちらに来た。 「は?……でっかいトカゲ?」 「……ドラゴン。」 (ドラゴン位、普通知ってるだろ……) てっきり驚いて腰を抜かすかと思ったが、どうやらそうでも無いらしい。 やはり、巳紅の腕輪も紅く輝いていた。 「何これ……。帆の指輪も何か光ってるしっ!……コレも何?」 黒い竜を指さすが、巳紅の事はどうでも良いかのように、俺を見据えている。 「さぁ……。とりあえず今は何もしてこないみたいだ…が?」 <…ハヤク、ボクタチヲ…> 指輪の二対の竜が浮かび上がったように見えた途端、頭に言葉が飛び込んでくる。 「ん…?双竜……フォイール?」 言葉を発した途端、指輪から碧い竜が二頭?(二竜と言うべきか?)現れる。そして、 黒い竜を取り囲んで両脇から抑えつける。……何が何やら分からない。 <…イマダヨ…> 小さく碧い竜が呟いたかに見えると、今度は背中から声が聞こえてくる。 「妙なアクセサリ買っちゃったっぽい……?紅竜……ハール?」 巳紅が呟くと、腕輪が輝いて今度は紅い竜が現れ、真正面から黒い竜を睨付けた。 そして何やら呟くと、黒い竜の姿が段々と霧のようになり……消えた。 静かになった所で、三竜がこちらを向き、碧い竜が話しかけてくる。 「とりあえず今日は終了。お疲れ様♪」 「……訳が判らん。」 「以下同文〜。」 俺と巳紅が言うと、紅い竜が答える。 「簡単に言えば、手伝って貰いたい。」 「何を、だ。更に謎だぞ。」 「簡単過ぎっ!」 そんなやりとりをしながら、とりあえず一通り説明して貰う。 ……どうやら、『封印を手伝って欲しい』らしい。さきほどの『黒い竜』は、 その『封印すべき竜の中の一竜』だそうで。残りは二竜だそうだ。それと、 『封印』と言っても、姿を維持出来なくさせる事らしい。 竜は、姿が維持出来なくする事が、『牢に入れる』のと同じ事のようで。 「…で。何で、俺と巳紅なんだ?」 「えーっと……たまたま?」 『……殴る?』 俺と巳紅の声が重なり、顔を見合わせた。碧い竜は、びくっと仰け反り、 もう片方の碧い竜の後ろに隠れて震えている。どうやら兄弟のようにも見えた。 「まぁ、全部終われば戻すから、さ。ご褒美もあげるし。」 「……子供さえ、引っかからないぞ、それ。」 紅い竜の言葉に、俺は文句を垂れる。まぁ、至極当然な事だ。勝手にやられて、 決められてココに居るわけだから。 「…どちらにせよ、今は戻れそうに無いな。」 駅のひしゃげたタクシー乗り場の雨除けを見やる。ロータリーの所の芝生も、 無茶苦茶になっており、樹は倒れ掛けており、タクシーも一台潰している。 「全て終わったら直すよ〜♪」 「今、戻せよ…。」 もう言っても変わらないのが判ってるので、諦めて溜息をつきながら呟く。 「君達の世界の時間は進んでないから。大丈夫、大丈夫。」 「さいですか…。」 「何か無茶苦茶だねぇ…。」 「じゃ、お手伝いよろしく〜♪」 ……碧い竜(弟?)を殴りたい衝動を抑えつつ、俺と巳紅は訳の判らない内に 了承させられ、『封印』とやらを手伝う事になったのだった。 =================================================================================== <紹介みたいなもの> 砂原 帆   … 高校二年生。♂。周りが結構どうでもいい。比較的、脳天気。 (さわら かい) 國府田 巳紅 … 高校二年生。♀。帆の行動が面白いらしい。 (こうだ みく) 店員     … アンティークショップの店員。 碧い竜(兄)  … 双竜、フォイール。二竜を総称した名前。 碧い竜(弟)    兄は普段無口。弟はお喋りだが。 紅い竜    … 紅竜、ハール。最年長者らしい? 黒い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』らしい。他の二竜の詳細は謎。 「何か」   … ? 「その子」  … ?