< 三、ひとときの休息 >======================================================== 結局、あの後近くのホテルに泊まった。どちらにせよ、支払いも出来ないから 適当に使わせて貰う。風呂もあった為、巳紅と交代して入った。 あの後、フォイール達(?)とハールは、また指環と腕輪に戻った。ただ今度は、 何だか幽霊が脇に浮かんでるような感じに姿が浮き出ている。 多少は話が出来る形となったのだが、どうも馴染めない。……巳紅はもう慣れたようだが。 「残りの二竜……だっけ。何処なの〜?」 「えぇと。ちょっと探してみる……。」 そんな巳紅とハールのやり取りを、俺は見つめていた。色々考える必要がある事はある。 ただ、今の状態では判らない事の方が多すぎる。 それと、今の時間……自体は進んでいるのだが、そんな感覚が余りない。 さっき説明していた『封印』関係の影響だろうと思うが。 とりあえず、現状を確認する。残り二竜の『封印』が目的だ。 ハールの話だと、どうやらさほど遠くない所に『一竜は居る』らしい。 こちらの動きが見えているのかどうかに関しては定かでは無いが、 さきほどの『黒い竜』の様子といい、おそらく勘付かれてるのであろう。 もう片方は、まだ判らないそうだ。残り一竜になれば、どちらにせよ判るから気にしないが。 動いてる気配は無いようなので、俺も巳紅もまずは体を休める事にした。巳紅からは、 まもなく寝息が聞こえてきた。急にこれだけの事があったのだから、疲れるのも無理は無い。 (……こうやってみると、ちゃんと女なんだけどな……) そんな事を考えながら、少し寝顔が可愛く見えたので、軽く頭を撫でてやる。 ハールには少し微笑まれたが、そんなことは気にしない事にする。フォイール達は、 特に関心は無いようだ。……弟は五月蝿いから威嚇だけしておく。 (……にしても、まだ何だか夢のような気がする) フォイール達とハールは、寝なくても大丈夫らしい。どうしてなのか聞いてみると、 『元の世界の自分達は、理屈上では時を彷徨っている状態なので、生も死も超越している』 そんな感じの事を言われた。……良く判らないので適当に納得しておき、俺も疲れたので そろそろ寝ることにし、巳紅の隣のベッドに横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。 ==記憶== (…見つけて……) ……誰かに呼ばれている気がした。自分の周りには何も見当たるものは無い。 真っ白い世界が何処までも続いている。唯一あるのは自分の影くらいか。 (……ここだよ…) 声の方を見やるが何も無い。とりあえず声のする方へ歩いてみる。 何処までも続いている白い世界。歩いた感覚さえおぼろげになってくる。 本当に俺は歩いてるのかさえ、信じられなくなってくる。 (…こっち……) 声の方向が西向きへと変わった。今度はそっちを目指して歩く。 いつまでも続く道。道と思ってる所さえ、印すら何も無いのだから、 多少なりとも不安になってくる。 (もう少し………) 何となく、近づいてきた気がした。自ずと歩調も早くなってくる。 ……気付くと、俺は駆け出していた。 どれくらい経ってからだろうか。息は切れないのだが、ようやく辿りついた気がした。 周りを見るが、何処を見ても白しかないので、見分けは付かない。 どうしようか思案していると、不意に頭上が明るくなった。 余りにも眩しいので手をかざしながら上を見ると……小さな光が降りてきたので、 優しく光を手で受け止めると、そこには小さな白い卵があった……。 (……ありがとう…) そう声がすると、何故だか涙が止まらなかった。俺が、卵を大事に手のひらに包み込むと、 周りが眩い光に包まれていき、意識が遠のいていった…・・・。