< 六、覚醒 >================================================================== 「帆、危ないから下がってて、ね〜♪……え?…」 ハール達の元へ辿り着くと、俺は短剣を構えて白い竜へと何本も投げる。 不意な地上からの攻撃に、白い竜は避けきれず身体に傷が付いていく。 (……よし、これでっ!) そして俺は、白い竜の方へ左手をかざし、強くイメージする。すると、 短剣は瞬く間に、縛り上げる『碧い縄』へと変化し、白い竜を縛り上げる。 縛られた白い竜は身動き出来ず飛べなくなり、地面へと落ちて轟音が周りへと響く。 「…後は、何とかなるだろ?」 「あぁ……。…そうだね…。」 ハールが驚いた顔でこちらを見た後、フォイール達に目配せして、『封印』の準備に掛かる。 「帆、何処でそんなの覚えたの?」 「…さぁな、何か出来たみたいだな。」 巳紅と話していると、白い竜が少し暴れ出した。まだ抵抗出来たようだ。 縛られ、フォイール兄弟に抑えつけられているので身動きはままならないようだが。 その間にハールの『呪文』は完成していく。ハールが目を見開いた後、 手をそちらへかざすと、『白い竜』が足下から消え始める。……これで『二竜』目か。 それと同時に、俺の『碧い縄』も消えていく。 「今日もお疲れ様〜♪凄いね帆っ。あんなの出来るなんて♪」 「……ああ。」 フォイール弟にそう答えていると、ハールは何やら哀しげな表情で、 俯いていたように見えた。気のせいだとは思うが。兄は特にいつもと変わらず。 「最後の竜は何処なんだ?」 「え〜と……ちょっと遠すぎるのかな、まだ判らない〜。」 ハールがそう答えた時、『白い竜』がこちらを睨んでいた。まだ上半身は消えていない。 「……随分話と違うじゃねえか、ハール……『候補』が居るなんて聞いてねえぞ…」 顔が消えかかる頃に、『白い竜』がニィッと笑いながら呟いて、完全に消える。 巳紅も聞こえたようで、俺と顔を見合わせる。 とりあえず俺たちは、フォイール達が見つけた、港の近くにあったホテルへと向かう。 ……ちょっとカウンターから妖しい所だが、他に目星の場所も無いので、 仕方なくそこで休むことにする。 昨日のように、俺はコンビニで食料等を見繕って、食べない分は冷蔵庫に入れておく。 (……『候補』って何だ?) 巳紅も気になってるようだが、ハールは何も答えないので聞きようがない。 フォイール達は何も知らないようなので、今のところは真相は闇の中だ。 俺は、巳紅に先に風呂に入らせてる間にベッドに横になっていた。 (…後、一竜か。) ようやく、元の生活に戻れるのかと思っていると、少々安心してしまったらしく 急激に睡魔が襲ってきて、俺はそのまま寝てしまった。 (……ごめんね…) 遠のく意識で、誰かが何か言ってた気がするが、覚えていない。 =================================================================================== <紹介みたいなもの> 砂原 帆   … 高校二年生。♂。周りが結構どうでもいい。比較的、脳天気。 (さわら かい) 國府田 巳紅 … 高校二年生。♀。帆の行動が面白いらしい。 (こうだ みく) 店員     … アンティークショップの店員。 碧い竜(兄)  … 双子の竜、フォイール。二竜を総称した名前。 碧い竜(弟)    兄は普段無口。弟はお喋りだが。 紅い竜    … 紅い竜、ハール。フォイール達より年齢は上のようだ。 黒い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』。大人しいタイプだった。 白い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』。武器は『光』。凶暴。 「何か」   … 帆が朝ぶつかったもの。 「その子」  … 夢に出てた子。詳細は謎。 指環     … 双竜の指環。媒介:『水』 竜:『双竜 フォイール』 腕輪     … 紅竜の腕輪。媒介:『?』 竜:『紅竜 ハール』