< 七、疑惑 >================================================================== 気が付くと、巳紅は隣で寝ていた。数時間ほど寝てしまってたらしい。 今回のホテルはベッドがキングサイズ1つなので、隣に寝ているというわけだ。 何やらもごもごと寝言を言ってるように口を動かしているが、気にしない事にする。 (……俺もシャワー浴びてくるか…) 身体を洗い、適度に暖まった状態でベッドへと潜るが、シャワーを浴びて 少し目が覚めてしまったらしい。仕方なく俺は、軽く近くのコンビニまで、 歩いてくる事にした。 「ハール、フォイール、ちょっと来てくれ。」 三竜を連れて、部屋を出る。気になっている事を聞く為に。 =疑惑= 「ハール、そもそも『封印』って何でする必要があるんだ?」 「……『悪い事をした竜への戒め』だよ。」 ぽつりとハールが俯きながら呟いた。 「『悪い事』って言うと、色々あるけど……。  その中でも『今後、悪影響がある者』が、今回の『封印』対象。」 「……でも、『話と違う』って言ってたよな?あの白い竜は。」 「………」 『候補』と呼ばれたのが、おそらく俺なんだろうが……どうも行動が腑に落ちない。 あの白い竜の言ってた事が本当ならば、まだ何か隠しているようだし……。 (どちらにせよ、今日はこれ以上聞いても無駄だな…) 俺はそう思い、部屋に戻って寝る事にした。ベッドに潜ると、程なく眠気が襲ってきた……。 =最後の封印= (…またあの夢か…) 俺は真っ白い世界に居た。周りを見回しても誰も居ない。だが、今回は違った。 視線をおろすと、丁度腰まで位の背丈の小さな竜が居た。 「……お前は誰だ?」 問いかけるが反応は無い。こちらをしっかりと見つめてきては居るのだが。 「まぁいいか……」 夢の中なのは『今回は何となく分かる』が、目が覚める様子も無い。頭は夢を見ているのに、 何故だか起きている錯覚にさえ陥る不思議な状態になっているようだ。 俺は、その小さな竜の隣に座る。 (きゅぅん……) 一言、少し寂しげに鳴いた…そんな気がした。俺が優しく頭を撫でてやると、 嬉しそうに抱きついてくる。その様子を見て、そっと背中に手を添えた。 よく見ると、赤い身体を持つ仔竜のようだった。見たことが無い竜なのに、 俺はどことなく懐かしい気がして、ぎゅっと抱きしめる。 (……きゅぅ……ごめん…ね…) 小さく、頭の中に声が響いた。その声と共に仔竜は砂のように身体が消えていく。 「…待ってくれ…俺は…」 段々と抱き締めている感覚が消えていく。温もりさえも、幻だったかのように。 俺は少しでも温もりが消えないように、抱き締める力を強くしながら、もがく。 (……また…逢える…よ…その時は…) 「……ああ。」 消えゆく仔竜の顔を見つめて、俺は小さく頷く。 「今度は……『外』で逢おうな。」 そう言って髪をくしゃくしゃと撫でてやると、仔竜は小さく頷き、笑っていた気がした。