< 八、最後の竜 >============================================================== 気付くと昼になっていた。巳紅は待ちくたびれたらしく、長々と説教をされてしまった。 何だか久しぶりに長く寝ていた気がする。夢の内容は…何処となく温かかった気がする。 「最後の竜の場所は分かったのか?」 「…それが…」 どうも、ハールの話では、『封印』の場所の反応が無いらしい。こちらに来た当時は、 確かに3つ『反応があった』らしいのだが、今は全く分からないという。 「……どうするんだ?」 当てもなく、探すには広すぎる。まして、今居るところに居るのかどうかさえ疑問だ。 かと言って放っておくと俺と巳紅は元の世界に戻ることが出来ない。八方手詰まりだ。 「え〜、帰れないの〜?」 「役に立たないな……。」 俺達の文句を余所に、ハールやフォイール達は捜索を続ける。今の時点では、俺や巳紅が 出来る事は特に無いので、二人で少し町を見ることにした。 「見つけたら教えてくれ。」 「了解〜♪」 元気良く答えたフォイール弟達を部屋に置いていき、指環や腕輪は付けたまま、 俺と巳紅は外へ出る。 「帆。そういえば、この町来た事無かったね。近かったんだけど。」 「そうだな……。」 俺や巳紅は、そんな他愛も無い話をしながら、誰も居ない港を歩く。元々、うちの学校は アルバイト等が『申請した後、審査』されて『許可』が降りるかどうかが決まるという、 そういうシステムになっていた。俺も申請した事があるのだが、どうも駄目だったらしい。 だから、アルバイトするにも出来ずに、今まで巳紅と遠出した事が無かった。 (……たまには、こうやって散歩するのも良いか…) そんなことを考えながら、ブラブラと二人で歩き続けると、近くの公園に辿りついた。 「帆。ブランコとかあるよっ!」 「そういうの、巳紅は好きだからな……。」 苦笑しながらも、巳紅の後をついていき、二人でブランコに乗る。少し遊んだ後、 公園の並木道を歩き始める。 「帆は……小さい頃の事、覚えてる?」 「……少しだけ、な。」 俺が覚えてるのは、印象の強かった記憶の断片。それ以外は『封印』されている。 自分でもその『封印』は外すことが出来ない。外したくない。 今は、思い出す必要が無い物だと思うことにしている……。 「そっか……」 巳紅は小さく呟くと、俺の隣に並んで歩き出す。 「どうかしたか?」 「ううん、別に……。」 それ以降、無言で歩き続ける。程なくして、ベンチを見つけたので、二人で腰掛ける。 「帆……何でこうなったんだろね…」 「……さぁな。」 月はまだ出ていない。ただ、空は赤みがかかっていた。 俺はベンチの背凭れに凭れ掛かるように、少し空を見上げていた。 「帆……。」 巳紅の方を向いた瞬間、顔が近付いてくる。俺は少し戸惑うが、そのまま目を瞑る。 気が付くと、巳紅を抱き締めて居た……。