< 十、封印 >================================================================== 「……こうするしかないんだよな。」 俺は『巳紅』へと飛びかかる。 「帆、やめてよ……。」 一瞬、巳紅を思い出して振り下ろす力が弱まる。その隙に、『巳紅』の炎の吐息が 俺へと襲い掛かるが、ハールの腕輪の『盾』に守られる。 そして、俺はそのまま『巳紅』へと太刀を振り下ろす。 間一髪に避けられたが、続けざまに横に薙ぐ。少し脇腹へと当たり、『巳紅』が呻く。 「帆、酷い〜……」 俺には、もう『巳紅』の声は届かない。『封印』の手伝いなんだ……。だから……。 『赤い竜』は俺に変化が無いのを悟ると、即座に威嚇してきた。 (……せめて…っ!) 『赤い竜』を睨みつけ、両腕をそちらへかざす。すると指環と腕輪が光りだす。 「……なんだ、これは……。」 気が付くと、自分の体が光を纏っていた。左手を前へかざすと、 『白い太刀』が現れた。俺は走り出す。 「巳紅……ごめんな……。」 そう呟いたのと同時に、『赤い竜』へと斬りかかる。俺の声は『赤い竜』には、 既に届かないのは判っていたが。 太刀が『赤い竜』に触れた瞬間。『赤い竜』は動くのを止めた。 俺はそのまま勢いで斬ってしまった……。 「……何でそこで動くの止めるんだよ。」 「帆だから、だもん……」 小さく『赤い竜』は呟くと、地に倒れる。そしてハールは『封印』を始めた。 まもなく『赤い竜』は消え始め、ハールが呟く。 「……『封印』は、これで終わりだよ。」 「なぁ、ハール。最初に言ってた、ご褒美って……。」 「ごめん、それだけは無理……だよ……。」 俯いたまま、俺は『赤い竜』が消えていくのを見ているしかなかった。 「どうしても……帆に……逢いたかったんだ……。」 『赤い竜』がそう呟くと同時に、全てが『封印』された。 =================================================================================== <紹介みたいなもの> 砂原 帆   … 高校二年生。♂。周りが結構どうでもいい。比較的、脳天気。 (さわら かい) 國府田 巳紅 … 高校二年生。♀。帆の行動が面白いらしい。 (こうだ みく) 店員     … アンティークショップの店員。 碧い竜(兄)  … 双子の竜、フォイール。二竜を総称した名前。 碧い竜(弟)    兄は普段無口。弟はお喋りだが。 紅い竜    … 紅い竜、ハール。フォイール達より年齢は上のようだ。 黒い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』。大人しいタイプだった。 白い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』。武器は『光』。凶暴。 赤い竜    … 『封印すべき竜の中の一竜』。武器は『炎』。巳紅自身。 「何か」   … 帆が朝ぶつかったもの。 「その子」  … 夢に出てた子。赤い身体を持つ仔竜。 指環     … 双竜の指環。媒介:『水』 竜:『双竜 フォイール』 腕輪     … 紅竜の腕輪。媒介:『?』 竜:『紅竜 ハール』