町を出て少し歩いてると、雨が降り出してきた。 俺は急いで木陰に身を寄せる。 「……キュ?」 声の主は、何かが気になるようで、首を傾げて俺の事を見つめている。 「ん?どうした?……あぁ、これは『雨』さ。」 小粒で軽い雨音を立てている滴を手に乗せて見せると、まじまじと見つめていた。 「空から降って来るモノだよ。……って、舐めてもただの水だって。」 まじまじと雨を見ている様子を見て、少し顔が緩む。 (やっぱり、竜も人も小さい頃は何も知らないんだな……) 軽く頭に手を乗せてやると、そいつは嬉しそうに目を細めていた。 俺の名前は「旅華」(りょか)。なりたての見習い竜使い。 この白い竜は「ちょび」。俺が育てる事になった竜だ。 背中に薄い白い翼を持つ、肌の色は純白の竜だ。「銀白種」というらしい。 その種の名前の通り、光の角度次第では銀色に光るようにも見える。 竜使いは、必ず卵から竜を飼育し「竜使いの竜」として育てる事になっている。 稀に仔竜から育てる者も居るが、「小さい頃に初めて生活してる者に依存する」 という、仔竜独特の傾向がある為、なかなか難しいようだ。 俺は卵を受け取って育てた為、そういう事も無かったが。 「もう少し雨が止むまで、ココに居るか……。」 そう言って、ちょびの脇に腰を下ろして、簡単に火を起こし始める。 ちょびは雨がまだ気になるらしく、しきりに目で雨を追いかけている。 首が上がったり下がったり。たまに樹が揺れるとびっくりして俺にしがみついたり。 余り濡れないようにたまに呼びかけながら、俺は紅茶を作っていた。 「ちょび、飲むか?」 コップを出すと、両手で持って温もりを感じながら少しづつ飲んでいた。 俺もそれにならって自分のコップに注いだ紅茶を飲む。 小さい頃は、竜は純粋に好きだったので、 「竜使い」に憧れはしたが、「竜使い」になりたいと思ったことは無かった。 その俺も、何だかんだで…結局、「竜使い」をしている。あの時の友に会う為に。 そして、足跡を探すように、旅をしている。今のところ進展は無いが。 「次の国は寒い地域だからな……。防寒具でも買っておくか……。」 そんな事を呟いていると、雨が止んだ。 俺はコップ等をバッグへしまい、ちょびに声を掛ける。 「さて、行くか。」 ほんのり雨の匂いがする道を、俺は歩き出す。慌ててちょびは少し飛び、 俺の肩にしがみつく。ココがちょびの「定位置」らしい。 そして俺達は旅を続ける。