「さて……そろそろ入る頃だな……」 少し身震いしつつ、国境の警備員に声を掛ける。 「竜使いと竜。審査よろしく。」 そう言うと、まもなく警備員が戻って来て入国審査が終わる。 ちょびは少し吹雪いてる風が寒いらしく、俺にぴったりくっ付いて離れない。 「ちょび、街に入るぞ。」 軽く声を掛けると、ちょびは俺の肩掛け式バッグへと潜りこむ。 それを確認してから、俺は街へと入る。 この雪国では、白竜は「雪の使い」として、崇められ、恐れられている。 仔竜となればそうでも無いだろうが、「竜使い」の認知が……未だ、まだ狭い。 揉め事にならないように、ちょびには角を隠す帽子を着けて、 バッグの中に居て貰っている。傍目から観れば「白い子犬」に見えるかもしれない。 ……鳴き声は勿論、違うんだが。 「キュ〜……。」 ちょびは小さく鳴くと、バッグから顔だけを出し、雪が降る空を見つめている。 「ちょび、寒いからほどほどにしろよ。」 俺が言うと、もぞもぞとちょびはバッグの中に潜って、目から上だけを出す。 「明日は、大きなお祭りがあるらしいから、観に行ってみるか?」 バッグに声を掛けて軽く叩くと、「キュー♪」という返事が帰ってきた。 やはり、お祭りとかは竜だろうが獣だろうが、種族問わず好きなようだ。 俺は早々に宿屋に記帳を済ませ、ちょびを連れて買出しへと向かう。 宿で出る食事はあるが、ちょびは「子犬」になってる為、満足な食事は無い。 「白竜」なんて説明したら、崇められそうだ。俺は逆に、捕まりそうだしな。 そうこうしつつ、ちょび用の食事を買い整え、防寒具も一揃え。 ちょびは通り過ぎる時の食品店が気になるらしく、何度も目移りしていた。 たまに俺に「これ欲しい」と軽くバッグの中から叩く事があったので、 ほんの少し買い与えながら、街を散策して用事を済ませる。 「疲れた……。」 結構な量のちょび用の食料を部屋に置き、俺はベッドへ寝そべる。 ちょびもすぐにバッグから出て、俺の隣に来て丸くなる。 ほどよいちょびの体温に暖まりながら、俺はうとうとし始めた……。 ……静けさの中、ちょびが起きあがり、周りを見回した後、俺をつつく。 起きた時には、警戒態勢になっていた。 (……物騒じゃない国って聞いたんだがなぁ……。) そんな事を考えつつ、俺は細身の剣を構える。